「十二人の怒れる男」(1957年)

三谷幸喜12人の優しい日本人」の元ネタ。見比べてみればわかるように、三谷作品のほうはこの作品を原案として巧みに踏襲し、結果的にリメイク作品としても完全新作としても面白いものを作り上げることに成功した。で、この作品。
製作から実に約半世紀の年月を経ても、色褪せない傑作。ある殺人事件(少年犯罪)の陪審の為に集められた12人の男性。で、11人有罪対1人無罪の構図が出来上がる。この辺り「怒れる男」というタイトルである理由がわかる。12人が怒りながら議論を繰り返す。全編の95%ぐらいが密室で行われる。とにかくシリアス、殺伐としており息詰まる展開が目白押し。もう脚本の面白さはお墨付き、12人全員の心情を機微を「有罪か無罪か」で描き出していく究極のヒューマンドラマ。もちろんサスペンス要素も強いので、サスペンスとして観るにも不足なし。
演出も面白く、密室をいかに躍動的に撮るかという映画としての工夫が全編通して凝らされているのが印象的。カメラアングルを割と頻繁に変えたりするだけではなく、役者たちにも細かい動きがある。ただ、いかんせん舞台的になってしまっている。それも含めてこの作品であることを考えれば、まったくデメリットにはならない。あと、実時間と映画内時間が一致しているという。正直なことをいうとまったく気がつかなかったのだけれども、これを知っていることで楽しめる仕掛けもありそうだ。時間を表す台詞が色々あったし。
96分に魅力的な要素を凝縮した、まさに古きよき名画。しかし覚悟して観ないと、観終わった後どっと疲れることは避けられない気がする。それでもラストは爽やか、そこにはきっと何か得られるものがあるはず。

十二人の怒れる男 [DVD]

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