サイレン FORBIDDEN SIREN

PS2のゲーム「SIREN2」を原案とし、ゲームとは異なるパラレルワールドを舞台に展開するサイコ・スリラー。世界初、サウンド・サイコ・スリラーを売り物にしている。
この映画について書くからには、音響についてまずは書きたい。通常の映画の約二倍の情報量、やはりシネコンで観たところ、文句なしに素晴らしい音響効果。音楽はもちろん、効果音はもう全方向からこれでもかというほど聴こえてくるし、極めつけはサイレンの音。劇中何度も使用されるこのサイレンの音、どんどんおどろおどろしくなっていく。ただサイレンが鳴り響くだけで怖い、という秀逸なもの。恐れ入った。
脚本としてはネタバレ厳禁を謳っているし、まずサイコ・スリラーというジャンルがジャンルであるため、深くは書かない。が、正直に言ってとても褒められたものではない部分も多い。伏線ぶん投げてんなあとか、説明不足過ぎやしないかとか、ゲームに直接繋がってる訳でもないし、首を傾げたくなる部分が多い。もっとも序盤はミステリアスな雰囲気を漂わせていて、いろんな設定仕掛けて、もう否応にも盛り上がる世界造形っぷり。これを最後まで維持できなかったのは勿体ない!
堤幸彦による演出は絶好調。カット割りはいつもの堤作品に比べればかなりシンプルで、演者の表情や「恐怖」そのものを捉えようとしている印象。ただ、撮影・唐沢悟との息の合い方は素晴らしく、カメラをぐぐぐっと動かしてみせるカメラワークなどは健在。
演者。市川由衣、アイドル演技ではあるが、スリラーの主役には適する感あり。田中直樹、二枚目役。いつもの田中直樹とは明らかに違う。キレ演技の冴える阿部寛、笑いも恐怖も全部請け負う西田尚美、異様な存在感を見せ付ける松尾スズキ、独特の空気感・高橋真唯、いるだけでいい嶋田久作、そして怪演の森本レオ。よく集めたなと思うほどのベストキャスティング。
脚本について文句はあるけれど、なんだかんだで面白く、堪能した87分。細かい工夫があちこちで凝らされた怪作。ただ、合わない人にはまったく合わない恐れはあり。