シベリア少女鉄道「残酷な神が支配する」

2006年7月23日/大阪・精華小劇場

  • 作・演出:土屋亮一
  • 出演:前畑陽平、篠塚茜、藤原幹雄、吉田友則、横溝茂雄、出来恵美/加藤雅人(ラブリーヨーヨー)

初めて行った精華小劇場で初めて観るシベリア少女鉄道。っていうかシベリア少女鉄道、初の旅公演。評判のよさに思わずチケット衝動買い、メタ演劇の面白みがありとのことで。
観た直後の率直な感想は、この野郎バカだなあと。珍しく太字使っちゃうぐらいバカだなあと。しかも観終わったあと、すがすがしいぐらい何も残らねえなと。これ褒め言葉ね。変になんかひきずらないっていうのが、これほど潔いこととは思わなかった。
観たのが大千秋楽だから思い切って感想でネタバレしてしまう。どうも映像化しないらしいし。しかし、この劇団の芝居のネタバレというのは……観る前に読んだら泣きたくなるような代物で。何しろシベリア少女鉄道の面白さの八割は終盤の爆発にあり。
その終盤に触れる前に前半について。サスペンス。面白いか面白くないかといわれれば、なんだか微妙。独特の緊迫感と脱力感をもって展開するのは個人的には好きなんだけど。結構本格的な頭脳戦になっていて、場面場面を微妙にずらしながら進行させる構成。かなり丁寧に作られていて好印象。犯人をバラしていながら、登場人物をちょろちょろ動かして観客をニヤニヤさせる、その一点では面白いと思います。全体としてフリの部分が面白いかどうか、はおいといても。多分役者の力量不足?演出はテンポよくていいと思うんだけどね。
終盤!回転舞台の性質を利用し、一個一個が独立した場所(部室、カフェテリア、セキュリティルーム)かと思っていた観客の脳みそを一瞬で破壊。なんと全部の部屋はつながっていました、なーんて。人質を部室に運び込むという最大の謎の真実が、それって!すっばらしい。くっだらない。最高。
高速回転する舞台の上を登場人物がもうものすごい勢いで移動して口々に喋り、動きをとり、もうその状況を目で追うだけで精一杯、しかし頭の中で「ありえねえ」って呟いてる自分に気づいて……。ちなみに舞台を回しているのがアントニオ猪木っていう意味のわからなさもすっばらしい。
しかし、この「ねた」部分が独立してるわけじゃなくて物語にうまく組み込まれているところが一番のポイント。これでないと絶対に収拾つかない、みたいな展開になっています。きっちり計算しているところが実に心憎い。本当なら感動できる台詞が完全にギャグにしか聞こえなくなるのがすごい。っていうか、どこまで計算しているんだ。おそるべし、土屋亮一。おそるべし、シベリア少女鉄道

って、なんとかこの面白さが伝わらないかと思って書いたけど、無理だった。演劇でしかできない面白さなんだから、文章に起こして面白いわけがない。次回公演は来年春あたり。ちょっとでも興味が沸いた人は是非。学割も用意してたりするしね……。