DEATH NOTE the Last name

もはや社会現象、デスノートの実写映画版後編。前編も観たんだけど感想書いてない。また機会があれば改めて書こうかな。
ひとことに凄く面白かった。原作は実はあまり好きじゃなくて、サスペンスとしてなんか頭悪いなあ、と思っていたフシがあるんだけど、映画版はそれを払拭。サスペンスとしても見事に完結した*1、極上のエンターテインメントに仕上がっていました。もちろん漫画特有の荒唐無稽さは残っているけど、それがまた味わい。
とにかくデスノートというアイテムに着目して練られまくった脚本が見事。どこまで原作に従ったものなのかはわからないけど。前編では「名前を書かれた人間が死ぬノート」というインパクトのある部分がプッシュされたのに対して、今回はもっと深いルールまで突っ込んで混沌とした心理戦。詰め込みすぎのきらいもあるけど、緊張感とスピード感を維持するにはしかたなかったのかな。細かく伏線をばら撒いて少しずつ拾っていく構成は完全に俺好み。好みはともかく、カタルシスもしっかり得られるし。ここが前編にはなかったところ。
心理戦以外に着目してみると、今回は笑いどころもしばしば。コメディ的な“間”の演出も取り入れているし、役者も部分部分で面白い演技をする。笑えないシーンなのに笑えるところもあって、ほんの少しブラック。そんなところも魅力。Lの一挙一動でいちいち面白いところがあるので、ちょくちょく注目すると良さそう。ところで板尾創路のシーンは笑っていいのだろうか。俺は笑ってしまったけど。*2
原作とは違うらしい結末、実にきれいにまとめてくれて愕然とした。もっとガタガタした感じで終わっても、それはそれでひとつの結末だろうなと思っていたのだけれど。終盤からの展開がとにかく面白かった。しかし、これだけ人がバタバタ死んでいく中で、結局人が死ぬことをしっかり描けたのは奇跡ではなかろうか。サスペンスで展開させて、最後は人間ドラマに着地する。決してお涙頂戴になっていないのがまたいい。
レッド・ホット・チリ・ペッパーズによる主題歌、前編は確かにどうかと思った。曲調とかはともかく、歌詞の内容は全然内容にそぐわないし。しかし今回、「スノー」はまさにぴったり。余韻を残して映画を終え、エピローグとしての役割を担っている。金子修介による訳も秀逸。
役者。藤原竜也、ふたつのキャラクターの月を巧みに演じわける。終盤は独壇場、凄いの一言に尽きる。漫画的なところを演技に違和感なく持ち込むセンスも随一、まさに完璧な夜神月松山ケンイチ藤原竜也と互角の存在感。コミカルな味を全編通して持たせ、キャラクターの面白さに+α。前編以上に魅力的。戸田恵梨香、小悪魔っぽさを押し出しつつも、時折の表情に戦慄させられた。マギー、いつも通りであるが故に箸休めとなり。池畑慎之介、声のみなれど存在感抜群。主役ふたりを食う勢い。*3鹿賀丈史、作品全体をきっちり締める存在。ひとつ違った目線の演技にはまさに脱帽。影の主役。
現実的な物語ではないけれど、現実を炙り出す力のある作品。老若男女、内容の割にはすっきりしているので家族でも観られるはず。前後編あわせて約4時間半、原作を超えたとすら俺は思うんだけど、世間はどう思っているんだろうか。必見。

*1:客層を考えるとちょっと難しいんじゃないの?とも思ったけど

*2:前編の皆川猿時も笑ったけど、どうなんだろう

*3:なんでこの人ピーター続けてるんだろう……