ONE PIECE THE MOVIE オマツリ男爵と秘密の島

(軽いネタバレを含みます!)

結論から書くと、最高。前回「デッドエンドの冒険」の感想で、「今までで一番好き」と書いたけど、その遥か斜め上をいった作品だった。でも、ONE PIECEの映画としてそれを許容できるか、が今回の作品を楽しめるかどうかの鍵になるみたい。
まず絵柄について感想。今までに比べて、一目見てわかるように全然違う。でもよく考えると、原作にかなり近づいているみたい。あと、女性陣がよかった(本音)。かわいい所はしっかりかわいく、セクシーなところはしっかりセクシーに、綺麗なところはしっかり綺麗に描かれてるように思いました。今では正直、この絵柄にとりつかれちゃってどうしようもありません。
次に作画について。勉強不足でよくわからん!よく動くな、アニメだなあ、とは感じた。あと、雑に描かれてるようで、でも上手く特徴を掴んでいる。遠景と化してても人物が把握できるのはすげえ。今回は原画に豪華一流スタッフが集結しているとか。へー。スタッフロールに俺でも知っている名前を見つけられた辺り、多分そうなんでしょう。もっと勉強します……。
内容について。細田守名物、超濃縮映画。ものすごく密度の濃い90分。構成がちょっとアレかな、と思う瞬間はあったんだけど、なんといっても全体的な完成度が半端じゃない。原作のエッセンスを取り入れつつ、原作の縛りからうまく抜け出している。要するに、うまく昇華することに成功している。でも言えるのは、ちびっ子に向けて手放しでお薦めできる作品じゃない、ということ。
まず、何といっても、前半と後半の違いがすごい。前半はテンポの良いコメディで、チャップリン映画を彷彿とさせるシーンもあるほど。コメディ監督・細田守の面目躍如!でも後半はそれが一転する。物語としては暗くなるんだけど、それはこの作品のもつ、ひとつの表情にしかすぎない。本当に描きたいもの、訴えたいメッセージは、更に深いところにあると思います。
さらに「デッドエンドの冒険」と決定的に違うのは、ルフィVS敵の構図をつくっていないこと。ルフィ海賊団を主人公として捉えているので、単純にそういう構図には出来なかったんだろうなあ。活躍するキャラクターを絞っているのは間違いないんだけど、仲間同士の物語になっています。それはオマツリ男爵側にしたって同じ。おかげで、オマツリ男爵がただ単に絶対悪になっていない。また、ゲストキャラがなおざりになっていないのも評価できます。全員に見せ場がある。仲間同士の物語であり、船長たちの物語であるのも良いです。
「分かりやすさは重要」と以前書いたけど、観客ターゲットである子供に、結構要求するものが多い。すごくいい脚本だけど、そういう意味ではマイナスになってしまうのが残念。
暴力シーンもこれまで以上に過激。グロテスクと捉えられるんじゃないか?というようなシーンもあるし。でもこれも「デッドエンドの冒険」とは違って、陰鬱な方向に作用したりする。それは結構賛否が分かれる部分だけど、やっぱりそれもひとつの表情だと思います。暴力描写を通して、訴えてくるものがある……少なくとも自分は感じたものがあったし。でも、カタルシスという点では首を傾げる。「デッドエンドの冒険」と、暴力シーンに対する意識と味付けが違うのもポイントかも。
ONE PIECEの世界観を使って自由に物語を組み立てているようにも見えますが、テレビオリジナルより遥かにONE PIECEしています。それでいて細田守らしく、一本で完結しているのもプラス。本当にお薦め。大傑作でした。