しりあがり寿「真夜中の弥次さん喜多さん」(マガジンハウス)

クドカンの手によって映画化されたので、原作も読まないといかんだろう、と……。合本になったので、読んでみました。
要するに、素晴らしすぎるしりあがり寿の世界ってこんなに凄かったのか、と今になって認識した。あらすじは簡単なもんで、ホモの間柄にある弥次さんと喜多さんが、喜多さんのヤク中を治す為にお伊勢さんを目指して東海道の旅をする。それだけの話なんですが、半端ない。
なんか、その道の人が読めば「普通にやればホモ漫画として面白くなる題材」だそうで。でもそうなっていないのは、ストーリーが凄いから。ぶっ飛んでいる。まあ、最初の頃は普通にギャグ漫画として読める。くだらねえギャグから、シュールなギャグまでギャグの種類もいろいろあってね。でもそれは本当に最初だけで、中盤にさしかかるころに展開が……。ハートウォーミングなエピソードもあれば、ちょっと怖いエピソードも出てきたりする。笑っていいのか、それとも……という場面もあるほど。
で、終盤に根底に流れるテーマに気付いて脱帽する。これって究極のラブストーリーなんじゃ、と思わされ、そこからはただ一気に読まされてしまう。
読み終わった時の読後感は、複雑。果たしてこの話は一体何だったんだろう、と戦慄した。笑えてホロリとして、そして怖い。要するに、まさにマルチな作品だということで。