PARCO歌舞伎「決闘!高田馬場」

2006年3月25日/東京・PARCO劇場(WOWOW)

年末年始から仕事しまくり三谷幸喜、そのラッシュの最後を飾るのは三谷幸喜初の歌舞伎作品。三谷幸喜が歌舞伎に携わるのが初めてなら、自分も歌舞伎を観るのは殆ど初めてみたいなもので、はたして感想を書いてよいものか、どうか……。
とにかく一言にいって2時間強(生中継では約2時間40分)、楽しみました。いやー、面白かった!とはいえ、恐らく従来の歌舞伎作品とは随分異なるんだろうなあ。でも、最初に観た歌舞伎作品としては大正解だったなあと思ったり。ニート状態の中山安兵衛が、叔父のピンチに助太刀しに行く……までの話。要するに、有名な高田馬場の決闘に至るまで。
ぶっちゃけた話、いつも通りの三谷作品+歌舞伎要素、みたいな。歌舞伎やでー!という感じは受けなくて。シチュエーションコメディっぽいとこも当然あるし。超端役を除いて全員に見せ場がある、という脚本になってました。時事ネタ小ネタもちょくちょく登場、不意をつかれて爆笑。
前半は割とローペース、人によっては退屈ととられてもおかしくないみたいな感じ。でもこれは後になってちゃんと効いてくる、いわゆる「溜め」。そのぶんの反動が後半にくるというか、積み上げられて後半爆発する面白さ。というか、クライマックスのこの高揚感は半端じゃない。スロースターター三谷幸喜、歌舞伎でも健在。でも、実質2時間10分ぐらいの作品でスロースターターを炸裂させるのはどうかと思うな。結果、面白かったから全部許すんだけど。
三谷作品では珍しいほどのスピーディー演出。役者の面白さを引き立てるのにもうまく作用して、うまくやったもんだと感心。特に後半はもう躍動感満点、盆*1も回しまくり、最大限に活用。役者の衣裳変化、もうなにがなんだかの超高速。ここまでくるとイリュージョン。あと見得を切ることで得られるカタルシスを初めて知った。ここぞという時に入れてくるもんだから、音と合わさって本当に痛快。
生中継用の前説(三谷幸喜市川亀治郎中村勘太郎)。もはや生中継では恒例の前説も、今回は三人がかり。スタッフいじりなど悪ノリもありで20分近く。個人的に歌舞伎初心者としては、亀治郎による歌舞伎ミニ講座が嬉しかったり。こういう親切な構成は本当にありがたい。
役者。市川染五郎、主人公でありつつ狂言回し。事情あり、なニートを好演。市川亀治郎、大忙し。男も女も両方こなし。格好いいところは格好よく、面白いところはとにかく面白い。中村勘太郎、「新選組!」の藤堂平助を部分部分で彷彿とさせながらもまったくの別キャラ。終盤特に光り。市村萬次郎、もうおいしい役どころをおいしく演じて面白いのなんの。クセ者の香り。歌舞伎役者にもこういう人がいるんだな、と思うとイメージ変わった感じ。

*1:廻る舞台のこと