SHINKANSEN☆NEXUS Vol.2「Cat in the Red Boots」

2006年10月9日(マチネ)/大阪・ウェルシティ大阪厚生年金会館芸術ホール

劇団☆新感線若手俳優を客演に迎えての「NEXUS」シリーズ。森田剛を主演に迎えた「荒神〜Arajinn〜」以来、二度目*1。今回の主演はジャニーズJr.から生田斗真、ただでさえ女性が多い演劇の会場、今回はさらに女子率高し。
東京公演はグローブ座、270度のステージを効果的に使った演出。では今回の大阪公演はというと、通常のステージを無理矢理に270度にしてしまったというもの。でも逆にこれはこれで面白い趣向があって楽しんだ。あとは開演前に吉田メタルによる前説あり、参加型演劇だぞーとアナウンス。本編中に観客が動いたりしなければならない箇所があるとのこと、これもまた面白い工夫。多分本公演ではできないような、こういう遊びにこだわり。ちなみに吉田メタルがやたら好青年でびっくりした、というと、お前はメタルさんに対してどういうイメージを持っていたんだ、となりそうだ。まったく人は見た目によらないね、という。
物語は「長靴をはいた猫」をベースに、様々な童話のエッセンスを持ち込んで一本にまとめてみせるというネオ童話。蓋を開けてみないとわからない、まさにおもちゃ箱みたいな話。何しろハリー・ポッターのパロディ*2から始まって、それがわりと物語の中核を成したりもするのだ。誰が想像できようか、いや、できない(反語)。脚本の完成度は一幕微妙、二幕面白といった具合。スロースターターの様相を呈していて、この構成はどうかなあと思った。生の芝居なんだし、もっと勢いついててよかった気も。しかしそのぶん後半は凝縮されてて童話の面白さが炸裂。ご都合主義だろうがなんだろうが全部まとめて放出、観ている側もすんなり受け入れられるスムーズな展開で観やすくてよし。前半のテンションはそのままに、しかし起伏のついた展開で惹きつけられる。これぞ王道の童話、いや王道のジュブナイルというべきか。童話の世界から逸脱することなく、主人公ふたりの成長にもスポットライトをあててみたりなんかして、とことん健全な面白さ。盛り上げて盛り上げて、うまいところにすとんと落とす作り方も、却って新鮮に思われたり。久しぶりに童心に帰れたような……。
新感線作品としては「おポンチもの」に近いとのことで、ネタの分量も多いし、濃い。が、面白いかどうかはムラがある(ように思う)。しょーもないギャグが伏線になってたりする仕掛けには単純に驚くけど。下ネタは「NEXUS」ということで随分抑え目、それでもジュブナイルとしてはやりすぎのきらいはあり?いのうえひでのりが結構脚本を書き換えたということで、その辺りも大きそう。ま、総じて面白いんですけどね。
ちなみに今回は歌も多めで、どうしてもCDで聴くと音はチープだったりするんだけども、非常に世界観とマッチしていてすばらしい楽曲揃い。ロックにこだわりすぎずバラードにも力が入っていたりして。ミュージカルと言い切れるわけではないけれども、それに近いものはやはりあり。が、基本的にストーリーの根本に歌は関わっていない気がする。特に今回は著しいかな。
役者。生田斗真、シリアスコメディ両方を巧みなさじ加減で。ジャニーズっぽさは残るも、その演技力には素直に驚嘆。この人でないと多分この作品は成立しなかった。松本まりか、歌唱力はおいといても猫の猫らしさを好演。ボーイッシュな可愛さで箸休めともなり。すほうれいこ、ザッツ童話な登場人物を器用にこなし。清楚であったりなかったりする、微妙な切り替わりに注目した。粟根まこと、前面に出てその濃さを発揮。その怪しい演技はジュブナイルにも意外に溶け込むから不思議。市川しんぺー、とっつきやすく面白い、ねたキャラを狙いすぎずで好印象。とにかく面白く、非常に贅沢な客演。逆木圭一郎、時々きらりと光るねたっぽさ。下ネタを下ネタとして言い切ってしまった時に、ネタとは違う面白さが生まれたりも。河野まさと、今回堂々の王子役。むっちゃくちゃに面白く、色んなものをとにかく力技でねじ伏せていく。自然と笑ってしまう快感。梶原善、二幕より登場で童話世界のヒールを怪演。面白くもどこかひやりとする演技がすばらしい。散り際まで隙なし。

*1:とはいえ、以前にもこういう傾向の作品は作っていたとか

*2:しかも面白いかどうかは微妙