みんな昔はリーだった〜EXIT from The DRAGON〜

2007年1月14日/大阪・シアタードラマシティ

・軽くネタバレを含みます・

後藤ひろひと、1年半ぶりの新作はまたもやパルコプロデュース。ネプチューン堀内健を主演に迎え、演劇巧者とフレッシュな人選で見せる2時間20分。
蓋を開ければひょっとして大王新境地?ブルース・リーという実在のスーパースターを題材に、彼に憧れる少年たちを主軸に据えた青春群像劇に仕上げ。内容はさらりと濃厚、青春の痛みやほろ苦さを描いて相変わらずのウェルメイドっぷり。
中学生ってそういうとこあるよな、という無邪気さやバカっぽさを前面に押し出して飛び道具的コメディを展開、客をいじる舞台装置のオモシロで遊ぶ、やりたい放題。けれどいつになく王道なストーリーで、同じく大王作「童話シリーズ」とはまた違って圧倒的にリアル志向。特有のブラックな笑いも出来るだけ控えめに、これってひょっとして児童劇でもあるんじゃ?みたいな健全っぷりにはなぜか困惑。なぜだ?
しかし油断するべからず、笑いの陰にちくちくと棘が見え隠れ。いじめをストーリーの中心に置いたのは偶然なのか意図したものなのか、痛ましい場面がやや連続。キャラが立ってるだけに本当に痛く、ああこれがやりたかったのか、と思いきやするっとそれをかわす展開はやや肩透かし。もっと過程を描いてもよかったんじゃなかろうか、とは思ってるけど、通して観ればわかるように、今回のテーマはそんなところにはなし。
痛み以上にほろ苦さとか切なさとか、要するに「あの頃ってバカだったよな」というおっさんたちの叫びが聞こえてくるかのよう。バカだったよな、という回想は笑い話だけれど、案外ヘビーな後悔でもある、という構造。後半もコメディには変わりないけど、それは湿っぽくなってしまうのを避けるためか。ギャグをいちいち挟みつつもしんみりと、結末へなだれこみ。
伏線張って張って最後にどかん、というカタルシスはいつもよりは控えめ。けれど数々のエピソードが最終的にまとまるあたりやっぱりよく練られてるなあと感心しきり。でもブルース・リーについて全然知らないとあんまり反応も良くないのかな、とか思うと、なんか勿体無いなと思ってしまう。やっぱりそういう小ネタも多いし、懐古要素も強いからしかたないんだけど。*1
演出は大王らしさというか、なんか物語に溶け込まなくて首を傾げるようなこともしばしば。冒頭のアナウンスには腹を抱えて笑ったけど、最後のアナウンスは蛇足じゃないかとか、天使が吊られるのはやりすぎじゃないかとか、思うところはあるけどエンタメ人間後藤ひろひとの所業としてはなんか納得。
役者。堀内健、テレビのままのキャラに笑い。食い足りない気はするけど今後に期待?池田成志、遊びつつさすがの演技者っぷり、作品をどこか引き締め。京野ことみ、ボーイッシュな少女はお手の物か、可愛らしさ炸裂。伊藤正之、語り部で暴走の抑えどころ。手堅い仕事で好印象。後藤ひろひと、サブキャラを自認しつつもおいし過ぎて素敵キャラ。竹下宏太郎、主演じゃないの?みたいなかっこよさ。リーっぷりも抜群。瀬川亮、純情キャラがぴたりとはまって好演。絶妙。熊井幸平、飛びぬけて?最年少、健闘伺え要注目。松角洋平、ワンシーン出演より前説が面白すぎて抱腹絶倒。板尾創路、少ない出番で鮮烈な存在感、やはりこの人はすごい。

*1:「男が惚れる男がいない」という台詞はなんか衝撃的だった……