乙一「夏と花火と私の死体」(集英社文庫)

非常に微妙。まあ面白いことは面白かったんだけど、俺には合わない作品だったかな。良くも悪くもDEATH NOTE的というか、正直なところ「なんだか背伸びしてる」感が否めません。
何故かな、と考えてみたところ、書いたのが16歳の時だったから、というところに個人的には落ち着いてみました。中学生や高校生の男ってのは、変に背伸びしたかったり、世の中に対して斜に構えちゃったりするもんです(実体験)。だからあの世代には比較的ボーボボが受けにくい、という話も聞いたりする。かえってそれでアホを晒してしまう世代に、乙一という作家はこの作品を書いてしまった、ということです。ちなみに、いわゆる「背伸び世代」における男が全員アホであると仮定すれば、少なくとも乙一は賢い部類にはいる人間です。やっぱり16歳でこの内容が書けた、というのは単純に凄いですし、それは乙一の才能です。ただ、もっとプロットを練って、背伸び世代を脱出してから書いたほうが素晴らしい作品になったのではないかと思います。まあ、この頭悪さ具合も魅力の一つなのかもしれませんが。
ということは、乙一の最近作はすごく面白いんじゃないか、ということなんですね。2005年の今まで、乙一の名前を本屋で見かけるということは、その才能は枯れていないのでしょう。そもそも、そんなに早く枯れる才能でないのは、この一作からも十二分に感じられます。ちなみに同時収録の「優子」は、表題作よりも面白く読みました。
DEATH NOTE好きにはお薦めできるかな、という感じ。初出がジャンプJブックス、というのも頷けるような内容なので。まあ乙一には興味を持ったので、これからしばらく読んでしまうでしょう。