クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶアッパレ!戦国大合戦

第6回文化庁メディア芸術祭・アニメーション部門大賞受賞作品
第57回毎日映画コンクール・アニメーション映画賞受賞作品

この作品も異色作。だけれど、傑作。オトナ帝国の次ぐらいに評価されている。国に認められた、正真正銘の芸術作品。まあ、オトナ帝国の功績が受賞にプラスになっているという見方も出来ないでもないけれど。
この作品も、どちらかといえば大人向けの印象も否めないです。子供が観ても十分に楽しめるので、そういうクオリティは今まで通りとても高い。けれど、いかんせんいつもと雰囲気が違う。好き嫌いがはっきりと分かれるのはその所為なのかな。もともとは原恵一氏が「雲黒斎の野望」の時に勉強した内容をここにきて使ったものだから、それも仕方ない話なんだけど。いわゆるタイムスリップものなので、ストーリーは簡単です。ただ、本格的に時代劇をやっているので、幼稚園児や小学校低学年ならまだ難しい部分もあると思います。
時代考証などもどうやら完璧だという話を聞きますし、黒澤映画へのオマージュもいくつか見つけることができます。タイトルにもある合戦シーンは、下手な時代劇より余程迫力がありますし、戦国時代をしっかりと描くことに成功しています。身分など、時代劇に登場しやすいキーワードも散りばめられていますし、やっぱり時代劇。
時代劇でありながら、純愛映画です。井尻又兵衛由俊、廉姫*1の二者のラブストーリーを主軸としてストーリーが展開するので、しんのすけたちが蚊帳の外になってしまうことも時々あります。ですが、きちんとクレヨンしんちゃんの世界観を活かしているので、「別物」感がない。キャラ設定をしっかりと使うことで、「クレヨンしんちゃん」でなくては出来ない脚本になっています。で、この純愛物語がいいんだこれが……。
ほとんど知られてしまっている結末ですが、ラストは徹底的に伏せておきます。しかし、最後の廉姫のセリフが完璧な名セリフで、そのセリフに泣かされた人がたくさんいたりします。自分もそのひとりだし。*2
オトナ帝国とこの作品が「映画 クレヨンしんちゃん」シリーズでは評価が高いです。この二作品は比べられることも多いですし、その都度論争が起こったりもするほど。先入観を持っている人も多いと思いますが、是非一度ご覧になってほしい。

*1:オトナ帝国でチャコを演った小林愛が声を当てています

*2:でもやっぱり、クレヨンしんちゃんに泣かされるって悔しいね