PARCO×RICOMOTION「人間風車」(2000年版)

2000年11月15日/東京・PARCO劇場(DVD)

後藤ひろひと、遊気舎時代の傑作をパルコプロデュースにて再演((2003年にも、入江雅人永作博美主演で再演される)。小劇場の巧者を揃えまくり、もうキャスト陣を見ただけで目眩がする。まるで幕の内弁当。
その内容は、中島らもによる「こどもの一生」につづく、ギャグ・ホラー第2弾。というか、この作品のジャンルをギャグ・ホラーと定めることは、ネタバレとしか思えない。まあ定まってるもん仕方ないんだけど。とにかく前半と後半の落差が恐ろしい。激しすぎる。
脚本。どいつもこいつも癖のある登場人物たちが織り成す、残酷な童話。前半はコメディ。ギャグと怪演の波状攻撃。序盤から飛ばしまくり、観客席も笑いに包まれるのがわかるというもの。とにかく笑い転げ、ギャグに溺れる。しかし底で流れるどこか不穏な空気に、こっそり怖がりもしてみたり。後半、あえてあまり触れない。ギャグ・ホラーという看板に偽りなし、もう前半の笑いが全部反転して恐怖に様変わり。前半あれだけギャグを繰り出したのはどこへやら。童話としての暖かさを守りつつ、その実体は凍るように冷たい。結末は、笑いでも恐怖でもなく……。もれなく呆然とした。もちろん、いい意味で。
役者たち。生瀬勝久、さすが。器用にこなし、童話の演じわけも完璧。阿部サダヲ、普段テレビで見る顔と、そうではない顔を使い分け。八嶋智人、暴れる暴れる。逆に恐怖を煽る。後藤ひろひと、唯一毒がなくて息抜きに。田鍋謙一郎、掴み所なし。大倉孝二、八嶋同様暴れ、しかし。大谷亮介、渋おもしろ。升毅、いろんな意味でギリギリか。
一見好き嫌い分かれそうで、かなり幅広い層に受け入れられそうな一作。すっかりのめりこんで、2時間半動けなかった。もし更に再演があるなら、是非劇場で観たいところ。