ONE PIECE カラクリ城のメカ巨兵

映画最新作。前作とはうってかわって、製作陣一同が「子供向け」と声を合わせる、かなり純粋な「アニメ映画」。脚本は前作に引き続いて伊藤正宏が担当、監督はテレビ版でシリーズ・ディレクターを務める宇田鋼之介……と、初めての組み合わせ。
で、その内容はといえば、宣言どおり真っ当な子供向けで、「ONE PIECE」の世界観からギャグだけを抜き取った感じ。シリアスなんかこれっぽっちも見当たらない。敵キャラもギャグ。味方も当然ギャグ。そういう意味では、今までで一番コメディ色の強い物語で。ただ、ギャグ入れれば子供向けなのか?ONE PIECEはギャグさえ入れれば子供向けになる作品なのか?という、根本的な疑問は拭えず。
いや、面白かったことは面白かったんだけど。笑いに走りすぎて肝心の中身がすっからかんじゃねえかな、と。観終わったあとに何も残らない、っていう映画は多いから、その点は別に文句たれるとこじゃないんだと思う。いかんせん脚本が弱い。宇田監督の演出も、シーンごとにぶつ切れになっている印象あり。それでもひとつの話としてはまとまっているし、笑っているうちに終わったという意味では恐らく大成功。劇場で子供たちが笑いながら観ている、という状況があったわけだし、製作陣の狙いはしっかりと達成されてる感じ。実際かくいう自分も、しっかり楽しんでしまったし。
ただ良くも悪くもTVオリジナルの延長線上というか、映画!っていう感じではなかったのが残念。映画であるからには、映画なりの工夫っていうのがどうしても欲しい。わがままなのか。
ゲスト。稲垣吾郎、棒読みのきらいはあるも、声質とあわさってなかなかの好演。田中真弓も絶賛する軽い演技は、やはり面白かった。次にアニメに出るときは、ぜひシリアスにも挑戦してほしい。極楽とんぼ加藤浩次は見事なはまり役。若いころを思い出してか、ノリノリにヤンキーな悪いやつ。山本圭壱はわざわざデブの声をつくるほどの気合の入りよう。ファンキーな印象あり。こちらもはまり役。