日本総合悲劇協会第4回公演「ドライブイン カリフォルニア」

2004年6月1日/東京・本多劇場(WOWOW)

松尾スズキ日本総合悲劇協会公演で1996年に上演した作品を再演。幅広く面白い人間たちをかき集め、松尾スズキがひとりひとりを丁寧に料理。「大人計画」所属の役者と外部の人間の、ともすれば非常に暴力的なコミュニケーション。
「シチュエーションコメディを目指して書いた」とは松尾の談で、その通り、かなりシチュエーションコメディしている。ギャグ満載、役者たちのやたらと張り切った面白さ満載、しかし……。
根っこは非常に暗く重く、まさに悲劇。それを無理矢理喜劇のレベルまで押し上げてみせる技量に、まずは感嘆。普通に考えれば悲しいわ悲しいわ、もう何から何までサイアクな物語。しかし客席からは笑い声、テレビの前で観ていた自分も不思議と笑っている、この不条理。登場人物ひとりひとりに役割が与えられ、物語が確実に悪い方向に転がっていく、せつなさたるや……。過去と現実がリンクするという、一見ありがちな手法もこの作品ではなかなか独創的に生まれ変わり。それは笑いであったり、なかったり。語り部を据えたことで、非常にわかりやすくなっているのも助かった。語り部がいなければ、観るほうはとんでもなく頭を使わなければならない気がする。
笑いと悲しみが同居するという奇妙な展開は、最終的にとてつもなく悲しく、とてつもなく切なく、しかし救いのある結末に着地。ハッピーエンドかバッドエンドかといわれれば、それはなかなか難しいもので。観るものの心にひとつのわだかまりみたいなものを残す、松尾作品特有の余韻を堪能。
役者。小日向文世、安定しつつも壊れ。小池栄子、おそろしく自由。村杉蝉之介、素とはまったく違う見事なじじいぶりに、感動。荒川良々、いつもながら独自の世界観を発揮。田口トモロヲ、ひたすらに怪演。電話のシーンは彼の独壇場。天晴れ。仲村トオル片桐はいり相手に善戦。よくやった。