巷説百物語 狐者異

殺しても、死なない。それが、狐者異───。

鈴の音。
御行───奉為。

見るからに胡散臭い魔除けの札を意気揚々と売りつける、摩訶不思議な男。通称、小股潜りの又市(渡部篤郎)。口先三寸、言葉巧みに人を謀る、闇の仕事人。
「祇右衛門は、死なない。だから、魔除けの札を買え」
……祇右衛門は死なない?
まさか、そんな奇怪な事があるものか──────。

WOWOWオリジナルドラマ「dramaW」作品。にして、堤幸彦最新作。ここのところ堤色を結構抑えた演出ばかりだったので、久しぶりに弾けていた今回の作品は正直うれしかった。待ってました!という感じ。
内容のほうは、京極夏彦ってこういう話を書く人だったのか、と驚いた。妖怪の話を書く人だ、というのは知っていたけれど、そういう世界でミステリもやってしまう人だったとは。その独特の内容に堤幸彦の味がプラスされて出来上がったのが今回の作品、ということらしい。なるほど、いかにも堤幸彦らしい小ネタもあちこちで伺うことができます。時代劇らしからぬシチュエーションが展開するシーンもあるけれど、そこのところは堤ということで許せる範囲。でも、京極世界が好きな人にとっては許しがたかったりするのかな。
ぐいぐい物語を引っ張っていくテンポの良さと相まって、とても面白かったです。作品の雰囲気もいいし、やはり物語の完成度が半端なく高い。すごいな、京極夏彦。でも、あの分厚い小説を二時間弱にまとめてみせた脚本・石川雅也の力量にも感動。説明不足になっていないし。原作・脚本・演出のトライアングルが、ほぼ完璧に完成されている印象。二時間弱を、すごく短く感じたドラマは久しぶり。
役者のほうも死角なし。渡部篤郎はまたも時代劇仕事ながら、流石の存在感。圧倒的です。この人の凄さはとにかく雰囲気にあるなあ。小池栄子は普通に芝居が上手い。のわりに、堤作品でしかあまり見ない。吹越満は底の見えない役者。大杉漣はいつもながらナイスな弾け方。ベテランの貫禄。ほか、怪優コンビの遠藤憲一嶋田久作。堤組レギュラー、佐藤二朗。出てきただけで面白い片桐はいり。とにかく、濃い面々のオンパレード。ミスキャストがいないのがまた凄い。
原作も読みたくなる、そんな作品でした。続編を是非やってもらいたい。